人間総合理工学科の「学びの文化」
人間総合理工学科には、カリキュラムや教育ポリシーだけでは把握しきれない「学びの文化」があります。これは、教員がトップダウンに作り出したものではなく、学生とのインタラクションを通じて、ともに作り上げた文化です。従来の理系教育を超えた唯一無二の学びが人間総合理工学科にはあります。と言ってもなかなか伝わりにくいので、いくつかの特色を選んで、当学科の学びの文化のさわりをお伝えいたします。

プレゼン重視

人間総合理工学科の学科の強みはなんといってもプレゼン力です! 「こんな理系欲しかった」と、この学科の卒業生が企業に評される一番わかりやすい理由が、このプレゼン力です。1~2年次から授業中のプレゼンはもちろん、プレゼン内容を考えるディスカッションや、内容をパワーポイントにまとめて提出する課題、そしてビデオプレゼン課題(自分達のプレゼンをビデオ編集して提出)が満載です。一般社会も理解できるよう専門的な内容を説明する課題や、分野を横断して視点を整理する課題が、戦略的にカリキュラムに盛り込んであるため、現代の理系に求められるプレゼン力の基礎を、自然に身につけることができます。話術に加えて、グラフィックスキルや文章力も、教員自らが授業中に詳しく指導しますので、もともとプレゼンが下手だった学生の成長には目を見張るものがあります。研究発表だけでなく、ビジネスモデルコンテストや就活、そしてその後のキャリア形成において、学生の大きな財産となっています。

グループワーク重視

創造力を発揮する上でも、いろいろな知識を総合する上でも、チームで仕事をするスキルが重要になります。そしてこのスキルは、鍛えれば格段に向上します。この学科では特に2~3年次にかけて、グループによる議論の仕方(狭義のファシリテーション)や、グループの取りまとめ方だけでなく、意思決定法やスケジューリングを含めたプロジェクトのマネージメント方法を直接教員が指導します。これはリーダーシップの基礎に当たりますが、リーダーの視点を学ぶことは、グループの一員としてプロジェクトに貢献する上でも、雲泥の差に繋がります。特に卒業研究や修士研究を進める時に、学生同士がスキルを教え合う上でグループワークのスキルは非常に重要であり、学びの速度も、到達度も、大きく向上します。そしてこのようなスキルは、就活におけるグループディスカッションや面接にも如実に現れ、その後のキャリアの大きな助けとなります。実際、卒業生からは「人間総合理工学の演習の進め方は、企業のお仕事とほとんど変わらない」という声も聞こえてきています。単なる知識の詰め込みではなく、実践力を養う真の教育を体験してみてください。

現場重視の実習が盛りだくさん

実験室にこもりっぱなしの重要な研究プロジェクトも沢山進行中ですが、海から山まで駆け巡る、徹底した現場主義も、人間総合理工学科の大きな特徴です。やはり名物は、合宿形式で行われる海水浴場の救命救急実習や、里山で行われる保全生態学の実習など、アウトドアのフィールドワークです。そして郊外から都市へと続く、水処理の現場見学や、巨大な研究施設で行われる、ごみ処理や発電技術の視察を含め、現場重視のカリキュラムが特徴です。4年次から大学院にかけ、共同研究を通して体験する現場は更に多様で、大学病院や海外の大学の研究室、野生動物の剥製の博物館や、山奥の試験農場なども含まれます。現場から多くを学び、研究の社会実装を加速させることで、中央大学の理念である「行動する知性」を実践します。

課題発見型PBL

人間総合理工学科のカリキュラムには様々な強みがありますが、それを総合する最初の檜舞台が3年次の「人間総合理工学総合演習」です。この演習は課題発見型PBL(Project Based Learning)というスタイルをとっており、学生がグループを組み、自分たち自身で現実社会の問題を発見し、ソリューションを提案します。ここまでご紹介した、プレゼン力とグループワーク力、そして徹底した現場主義を、互いに結びつけ、応用することで調査や分析を進めていきます。このような総合演習は指導にも多くの経験を要し、うまくカリキュラムに取り入れている研究教育機関は非常に限られているため、就活における小論文や面接の語り種となっています。そして卒業研究や修士研究も、課題発見型PBLの要素を存分に取り入れたものとなっているため、人間総合理工学総合演習で得られる経験をもとに、高い研究水準と教育効果を達成しています。

英語で学ぶ&留学
近年は中央大学の理工学部全体で、英語を学ぶ態勢がさらに強化されましたが、人間総合理工学科では英語を学ぶだけでなく、英語「で」学ぶところまで、学生の能力を引き出します。この学科では、教員全員が留学や国際共同研究を通して、豊富な国際経験を積んでいます。1~2年次では、必修である英語の授業に加えて、数多く の学生が英語の特訓を希望するため、学科の教員が直接指導に当たります。そして学部の全ての学年から大学院にかけて、英語により開催される専門的な内容の授業が多数用意されています。講義も課題も全てが英語のものもあれば、対訳形式のもの(英語で少し進むたびに、日本語でも同じ内容を繰り返す)、そして課題のリーディングだけが英語で、講義そのものは日本語のもの、など様々な種類の授業が用意されています。もちろん帰国子女など、入学当初から高い英語力をもつ学生もいますが、大半はこの学科に入ってから大幅に力を付けた学生です。この成果は、就活や留学の実績にも反映されていますが、ここでは語り尽くせないので、是非専用ページを御覧ください。

学会発表や論文発表が盛ん!
「人間総合理工学科は専門性が低いから、研究はイマイチなのでは?」と思われがちですが、実は研究のレベルは高いです。考えてみるともっともなのですが、人間総合理工学科では異分野の複合的視点が重要となります。そして、各分野から採用できる教員は1名になります。そうなると、教員のみなさんは、各分野を代表するような人材でなければならず、実際、その分野の第一人者や若手有望人材を登用しています。でも、個々の先生が一人で研究をおこなっているわけではありません。実は、人間総合理工学科のハイレベルな研究の担い手は学生自身なのです!そう、この学科では学生が主役です。学生であるからといって、肩身の狭い思いをする必要はありません。実力があれば、学部学生が卒研を学会発表したり、時には英語で論文発表することもあります。修士課程では学会発表や論文発表の頻度はさらに増えます。そして、なんと中大は大学院生の国際学会の発表支援制度が国内でも最も充実していて、実質無料で年1回この制度が活用できます!研究の状況は、各研究室のホームページや論文引用データベースのGoogle Scholarなどでも確認できますので、ご覧ください。

共同研究?いっそ起業?
人間総合理工学科の教員はそれぞれ様々な分野との共同研究をおこなっています。なので、学生にも、環境、水、エネルギー、食品、製造、IT、化粧品などの企業や、医療機関、NPO、他大学など、国内だけでなく海外も含めて、様々な共同研究の機会があります。他大学や他学科だと企業や外部との研究の接点を得るためにインターンで経験を積んだりもしますが、人間総合理工学科では学びの中でインターン以上の経験ができる場合が多々あります。そして、そのような経験はキャリア形成にも大きく役立ちます。たとえば、東南アジアの水浄化の研究に関わって、フィールドワークを積み重ね、その経験を発展させて世界で活躍する水エンジニアになったり、シンガポールの大学病院で研究解析のコンサルテーション経験を活かして世界屈指のグローバル企業でITコンサルタントになったり、大学だけではとどまらない経験がキャリア形成につながる場合もあります。中央大学のスローガンである「行動する知性」が、共同研究を通して体現できるのも、当学科の学びの特色です。そして、共同研究だけにとどまらず、中には、自分で起業をしてしまう学生や教員もいます。ビジネスコンテストの優勝を経て、水質測定アプリのベンチャー企業を興している学生や、救急救命の学習アプリを開発して起業した助教もいます。さらに、在学中に起業したり、卒業まもなくビジネスを立ち上げるという学生も数人出ています。学科としては、起業は積極的に支援していますので、志ある学生はチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

実は統計が得意
統計学という言葉からは、数学やコンピューターサイエンスを思い浮かべるかも知れませんが、人間総合理工学科の強みの一つも統計学です。特に異分野の知識を総合して、実社会に応用する力を養う上で統計学は重要であり、基礎を学ぶだけでなく、それぞれの分野で工夫された、多様な実例にふれることが大切です。例えばこの学科では、疫学や薬学における統計学や心理学における統計学を筆頭とし、生態学における統計学や、データサイエンスの先端技術に至るまで、幅広く学ぶ事ができます。単に事例の概要や理論に触れるだけでなく、現場のデータを吟味し、専用の様々なソフトウエアにも直接触れることで、自分の頭と手を使って問題を解決する主体性が身につきます。そして統計のスキルと結びつけることで、学生の定量的な考え方や、理解する力、そして伝える力は格段に向上し、この学科の研究水準や関連資格の取得実績にあらわれています。就職活動においてもITコンサルタントやシステムエンジニアに加え、環境エンジニアリング企業や総合電機メーカー、調査会社などを中心として、定量的な考え方にもとづいて戦略や意思決定を行う部署や部門に多くの人材を輩出しています。

人間総合理工学科は少人数制?
人間総合理工学科は小規模学科と大規模学科の「いいとこどり」ができるように、カリキュラムと教員構成がデザインされています。例えば一般的に大規模学科が得意とするのは、大人数の学生同士の切磋琢磨です。この学科では、グループワークやプロジェクトマネージメントの方法を早い段階で鍛えるため、大規模学科にも勝る、学生同士の伸ばしあいを実現しています。ここで重要なのは、単に学生を放っておくのではなく、学生の自主性を引き出しつつ、指導が必要な時は、徹底して指導する教員の「メリハリ」です。例えば研究、語学、留学準備、資格勉強、就活などを、始めたばかりの頃や、中だるみの時期、そして壁にぶつかった時は、個人や小グループ単位で、あたかも少人数学科かのような手厚い指導を受けることができます。特にこの学科は様々な専門を横断的に扱っているため、学生の学び方と進路が多様であり、このような「オーダーメイド」の指導方法を基本として、学生の可能性を最大限に引き出します。