人間総合理工学科で取得しやすい資格

人間総合理工学科を卒業すれば自動的に取得できる資格は一つもありません。でも、本学科で資格を取得せずに卒業する学生はほとんどいません。多くの学生が、同窓の学生との切磋琢磨を通じて、様々な資格取得に挑戦しています。「共に学ぶ」という姿勢こそ資格取得には重要ですが、そのような文化がすでに形成されているということは、人間総合理工学科の魅力の一つでもあります。


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可能な資格一覧


実際にどのような資格が取得可能なのか、ご紹介いたしましょう。いずれも取得に必要な勉強時間は素人から初めて300時間程度というものが主ですので、挑戦し甲斐のある資格となっています。標準的には、学部生で1つ以上、院生では2つ以上は取得しています。


統計検定2級

まず、本学科のカリキュラムとの相性がよく、取得しやすいのが「統計検定2級」です。統計学は「科学の文法」とよばれています。自然科学のみならず、人文、社会科学におけるエビデンスベースドの(実証に基づいた)知識の獲得に必須の学問です。統計検定2級は、大学基礎レベルの統計知識の習得を保証する資格で、日本統計学会が公式認定しています。データサイエンス系の基礎的素養を担保する資格として、近年、重要度は高まりつつあります。

大学の専門レベルでは、生物統計学、心理統計学、保健医療統計学など、様々な分野に統計学が分化してきます。統計検定2級はそれらが枝分かれする前の共通基礎知識がターゲットなので、大学生が取得するのに相応しいレベルとなります。人間総合理工学科のカリキュラムは豊富な統計関係の授業を提供しており、1-2年でしっかりと勉強を行っていれば、比較的少ない努力で統計検定2級は取得可能です。人間総合理工学科では、おおむね、1/4~1/2の学生が、この資格を取得します。

ただし、「統計検定2級」と言っても即座に通じるということはないので、履歴書に書いただけで、就活に有利いうものではありません。しかし、就活で「統計が得意」という事実を積極的にアピールする際には、有力な根拠を提供しうる資格となります。なお、当学科から難関のITコンサルタントとして就職する学生は、基本的に統計検定2級を取得しています。研究分野によっては、さらに上位の統計検定準1級に挑戦する人もいます。あるいは、難易度が同等の専門統計調査士やデータサイエンス(発展)に挑戦するのもよいでしょう。

当学科の学生には極めてコスパのよい資格ですので、まずは取得すべき資格と考えた方がいいでしょう。実際の試験は、コンピュータを用いたCBTテストになりますので、受験機会は豊富にあります。ぜひ、挑戦してみてください。


技術士第1次試験(技術士補)


技術士とは、技術専門職としてのエンジニアの能力を担保する国家資格です。技術士になるためには、まず1次試験に合格して技術士補となり、4年以上の実務経験を経て、技術士2次試験に合格する必要があります。官公庁の技術案件入札には技術士の関与が必須という場合が多く、エンジニアとしてのキャリアアップには有用な資格です。1次試験は、公益社団法人日本技術士会が実施しています。

技術士試験は21の専門分野に及んでいますが、当学科の場合、環境学分野がカリキュラムとの整合性が最も高くなっています。その次に上下水道部門での受験が盛んで、生物工学部門も合格実績があります。1つの分野で1次試験を合格していれば、4年後以降の技術士2次試験で別の分野を受験してもかまわないので、まずは、得意な分野でチャレンジしてみてもいいでしょう。当学科ではかなり人気の高い資格で、1/5~1/3の学生が取得しています。研究室によっては、取得が義務付けられている場合もあります。

理系分野で技術士を知らない人はまずいないので、就活においては、有利にはたらきます。たとえば、環境コンサルタントや水環境コンサルタントになる場合、環境学や上下水道部門の技術士補資格取得は大きな効果を発揮します。これらの職業を目指す場合、まず、技術士補は有無を言わずに取得してください。あるいは、IT系企業において、環境学の技術士補は一見、意味がないように思えるでしょうが、情報工学の技術士補の重みは分かっているので、「大学時代にかなり勉強をした」という迫力は伝わります。

試験は年に1回であるため、技術士1次試験の取得には計画的な準備が必要です。学部での就職に使う場合、1年次に試し受験(受かる人もいますが)、2年次に本番、落ちたら3年次に再チャレンジというスケジュールがお勧めです。大学院に進学する場合は、2年次から受験を始めて、学部在学中に合格すればよいでしょう。そうすると、M1の夏インターンに使えますので、便利です。

人間総合理工学科の学生にとっては、環境学は特に受けやすい分野になりますので、ぜひチャレンジしてみてください。


TOEIC(700点以上)

英語の能力試験としては、最も一般的です。ビジネス分野でまず英語能力の証明と言えば、TOEICとなります。おおむね、600点くらいから履歴書に書いてアピールが可能で、700点を超えると「英語が得意」という印象を醸し出せます。

TOEICは英語4技能のうち、readingとlisteningの2技能対応ですが、TOEIC700点以下の人にspeakingとwritingの能力を測ってもあまり意味はないので、TOEIC700点を超えるまではTOEICで十分という認識です(檀教授曰く)。実際、300点から900点のレンジは極めて妥当性が高く、英語の実力を反映した結果が得られます。

なお、英検準1級でもTOEIC700点と同等の効果があります。英検は、4技能対応で広く認識されている資格ですので、こちらでも問題ないでしょう。ただし、TOEICよりも受験料は高額です。

人間総合理工学科の場合、入学時に取得を義務付けしており、さらに、その後も受験機会が多数あります。加えて、檀教授がTOEICスコアと脳機能の関係を研究しているため、さらなる受験機会も得られます。おおむね卒業時までに1/2が600点、1/3が700点を取得しているという推移です。研究室によっては、700点取得が義務付けられているところもあります。

TOEIC700点までは常識的な努力で十分に取れる範囲ですので、ぜひ、頑張ってみてください。


ITパスポート(参考までに)

IT系の基礎的知識を問うエントリーレベルの国家資格です。おおむね大学初級レベルの知識で合格可能です。一応、国家資格になっていますので、履歴書に書いてそれなりにアピールはできます。しかし、難易度は低いので、後述の基本情報技術者への足掛かりと考えた方がいいでしょう。実際、1年次の情報処理の授業の半ばで模試をさせますと、10%程度は合格レベルに達しており、半数は1週間程度の勉強で受かるというレベルにあります。300時間かかるタイプの資格ではありません。受験も簡単で、コンピュータによるCBTテストがほぼ毎週受けられますし、Webで無料模試もあります。

目標にする資格とは言い難いですが、最初に資格を取るとすれば、カリキュラムの整合性からしても、まずITパスポートをお勧めいたします。


基本情報技術者(FE)

IT関連の本命資格はこちらです。「基本情報技術者試験」は、経済産業省が実施する国家試験「情報処理技術者試験」のひとつです。高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けていることを認定する試験です。IT関係の基礎的リテラシーとプログラミングの初歩的技法を問う試験内容です。

ITコンサルタント、システムインテグレーター(SIer)、システムエンジニア(SE)を目指す場合は、まず、取得を考えるべき資格となります。たいていの場合、これらの分野にはポテンシャル採用がありますので、受験時には取得は必須ではありませんが、入社後は取得が義務付けられるか、取得によって待遇が変わる場合がほとんどです。

という事実を考えると、逆に在学中に取得しておくと、デジタル系人材としての力量をアピールできますので、就活には極めて有利になります。FEの取得は、人間総合理工学科の総合力にIT系の専門能力が加わるということ示す証となります。実際、FEの取得者は、難関IT系企業に入社しています。IT系企業の就職者でも入社時にFEを取得しているのは、10%程度であり、受験時となると数%にすぎないので、希少価値があります。

受験機会は4月と10月の年に2回です。人間総合理工学科のカリキュラムでは、1年後期の情報処理演習でExcel VBAのプログラムを習得しますので、2年次の春試験にまず表計算を受験科目として選択して挑戦するのがお勧めです。2年次にはプログラミング言語1でPythonの学習もしますので、そちらに受験科目を鞍替えしてもいいでしょう。

難易度的には、FEまでならば、人間総合理工学科の学生ならば努力で受かるレベルです。一般的に300時間の学習が必要なタイプではありますが、授業を通して知識の下駄履きがありますので、それよりは短い学習投資で合格可能です。より上位の応用情報技術者(AP)となると、いきなりは難しく、FEを取得してから大学院での受験が一般的です。なお、FEを取得しておけば、IT業界で食いっぱぐれることはまずないので、保険として取得しておくのもいいでしょう。


宅建士(宅地建物取引士)

土地や建物の売買、賃貸物件の斡旋などをおこなう不動産業において、売買契約に伴う重要事項の説明をおこなえるという国家資格です。不動産取引には必須の資格です。なぜ、理系で、そして人間総合理工学科でこの資格を?と思うかもしれませんが、当学科では「まちづくり」に興味のある学生が一定数おり、そのような学生が大手デヴェロッパーを目指す場合、宅建士の取得は必須と言ってよいでしょう。

よく勘違いをする学生がいるのですが、大学でまちづくりの卒研をおこなっていたからと言ってデヴェロッパーへの就職が有利になるということはありません。面接でのアピールとして、多少、有利になるという程度です。むしろ、大手デヴェロッパーに関しては、文系の最優秀層が狙ってきますので、大変です。なんせ、母数が数倍からの選りすぐりメンバーとの戦いになりますので、競り勝つには相応の戦略が必要になります。簡単に言えば、理系の素養に加えて、文系の素養も十分にあるという点をアピールする分離融合戦略です。そのための最大の武器が「宅建士」です。これにTOEIC800点があれば、大手デヴェロッパーでも選考の有力な対象として浮上してきますので、3年次の秋試験までには取得しておいた方がいいでしょう。

実際のところ、宅建士の試験は、狙った学生の多くが取得しています。一般的に、300時間程度の勉強が必要と言われていますが、中央大学に入学できる程度の学力があれば、その程度の努力で受かります。多くの学生は不動産業界への就職が決まった後に宅建士を目指し、在学中に取得しますが、やはり、就活後より前に取得しておく方がアピーリングですので、計画的な早期取得がお勧めです。原田研の学生を中心として、宅建士試験の勉強会も毎年開催されておりますので、心強い仲間と切磋琢磨しながら目指してみてはいかがでしょうか?

なお、これまで、宅建士資格を取得しながらも、まったく別分野に就職するという学生も少なからず存在します。その場合でも、持っていて一目置かれる資格ではありますので、就活には有利な資格と言えます。さらに、宅建士はこの世に不動産がある限りは食いっぱぐれのない資格ですので、保険としての取得は有用です。


簿記2級

簿記2級は、日本商工会議所が認定している会計分野のリテラシーと運用能力を問う試験です。財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うことができるというレベルです。簿記2級も「理系なのになぜ?」と思われる方が多いですが、端的に言って、ITコンサルタントや経営コンサルタントの有力企業に採用内定となった場合、簿記2級の取得が義務付けられる場合がほとんどです。実際に、そのような企業へ就職する学生は、在学中に取得しています。経営コンサルタントの草分けである大前研一も、繰り返し「現在のビジネスマンにおける三種の神器としては英語、IT、会計」であると主張しています。

となれば、逆にITコンサルタントや経営コンサルタントへの就職を目指す場合、あらかじめ簿記2級を取得しておけば、採用には有利に働きます。また、銀行への就職にも強力な武器となります。

もともと理系の学生は数学的な運用能力が高く、原価計算など簿記2級レベル計算問題には難なく対応可能です。実際、計算問題では下駄を履いているような状態ですので、一般的な勉強時間である300時間よりは短い時間で合格に至る場合がほとんどです。参考書や問題集も充実しているので、独習でも十分に対応可能です。

ちなみに、簿記2級を取ると、財務諸表の情報から、経営に関する数字が把握できる能力が身につきますので、あらかじめ取っている学生は、就活の際には、財務諸表をチェックして客観的な情報から企業の現状と将来性を分析しています。この意味でも、就活には役立つ資格です。


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組み合わせ例

資格には、組み合わせると、自分が大学時代にどのように勉強を頑張ってきたか、実証的に説得することができるという効用があります。資格を以て、ストーリーを描けるわけです。たとえば、3つの組み合わせですと、次のような具合です。


「TOEIC700点」+「技術士補(環境学分野)」+「統計検定2級」
データ解析に強い環境学の専門家というイメージが醸せ出せます。グローバル案件も任せられそうですね。
ターゲット:環境コンサルタント、環境エンジニア








「TOEIC700点」+「基本情報技術者」+「統計検定2級」
データアナリストとして、申し分なさそうです。実際、ITコンサルティング企業へ就職する学生はこのパターンが多いです。
ターゲット:ITコンサルタント、システムインテグレーター










「TOEIC700点」+「簿記2級」+「統計検定2級」
簿記2級を入れると、とたんに経営へのリテラシーがアピールできるようになります。データ解析にも強そうな印象が得られます。
ターゲット:ビジネスコンサルタント、銀行の総合職








「TOEIC800点」+「宅建士」+「技術士補(環境学)」
宅建士を取得していると不動産業へのやる気が証明できます。さらに、環境分野へのリテラシーから、エコロジカルな開発への期待も持てそうです。TOEIC800点ならば、海外進出も可能そうです。
ターゲット:大手ディベロッパー










これからの時代にグローバルな活躍は基本ということで、すべてに英語力を基礎として組み込んでいますが、学部生で3つというのはかなりの努力を要しますので、実際には2つくらいにターゲットを絞って、「資格で語る」というアピールができるまでにはしておくのが良いでしょう。

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