高田 まゆら 教授

Mayura Takada

保全生態学研究室

<専門分野>
群集生態学、保全生態学
<研究テーマ>
野生動物管理、持続可能な農業
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※2020年4月に着任

Profile :
東京都出身。津田塾大学学芸学部数学科卒業。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了、その後博士(農学)の学位取得。学術振興会特別研究員DC、東京大学特任助教、帯広畜産大学助教を経て、東京大学大学院准教授に就任。2020年4月より中央大学理工学部人間総合理工学科に保全生態学研究室を設立。最近の趣味は、近所の緑地や公園にて家族と一緒に生きもの観察。

学生に期待する
3つの資質

  • 資質1柔軟性
  • 資質2主体性
  • 資質3自立心
私たちが多様な生物から生態系サービスを享受し続けるために。
 

持続可能な開発目標(SDGs)と保全生態学

SDGsは、人類の誰もが豊かで安全な暮らしを将来にわたって営むことが目的とされています。こうした人類の暮らしは、自然の恵み、つまり生物から多様な生態系サービスを受けることが前提となっているため、生態系サービスの持続可能性を追求する生態学・保全生態学は、全てのSDGsの達成の根幹をなす学問分野の1つであると言えるでしょう。保全生態学研究室では生態学や保全生態学を軸として、生物多様性の維持・創出機構の解明に関する基礎的な研究から、生物多様性の保全や生態系管理に貢献する応用的な研究まで幅広い課題に取り組んでいます。

生物多様性の危機

大坂真希氏提供


現在、生物多様性は気候変動や自然環境の破壊・汚染、資源の過剰な利用、そして侵略的外来生物などにより深刻な危機に瀕しています。そのためSDGsの達成に必要な人材は、生物多様性が維持・創出される仕組みを学び、生物多様性に関する喫緊の諸問題の解決に貢献できる知見や技術を獲得する必要があります。生物多様性の様々な危機を回避するために必要な長期的・短期的な対策、そして局所的・広域的になすべきことを考えながら問題解決能力を鍛えてもらうことを意識し、広く「人間と自然の共生」にかかわる喫緊の社会的諸課題について深く考える機会を設けるような教育を心懸けています。

地域が抱える様々な問題に保全生態学から貢献する

我が国の農業地域は、食糧生産を担う重要な場でありながら高齢化や人口縮小、農業生産の持続可能性の懸念、農業生態系やその周辺の森林生態系の劣化、一部の野生動物との軋轢など様々な問題を抱えています。本研究室では、こうした日本の地域社会が抱える様々な問題の解決に貢献するため、「持続可能な農業のための生態系管理」や「急増する野生動物の被害防止と共生の課題」について保全生態学を軸として科学的なエビデンスを提供し、地域社会の発展に尽力しています。

 

 

高田研を理解するためのキーワード4

  • 1.増えすぎた野生動物の管理

    多くの野生動物が絶滅の危機に瀕している一方、一部の野生動物が増えすぎて人間の経済活動や地域の人々の安全な暮らしを脅かしたり森林生態系を改変したりするなどの問題を引き起こしています。このように急増する人と野生動物との軋轢は、人口縮小・高齢化が進んだ地域における持続可能な地域社会の形成の重大な障害となりつつあります。本研究室では人間との軋轢が深刻化している野生動物の管理問題に焦点を当て、野生動物の農業被害や人身事故、家畜との共通感染症等が生じやすい場所の空間特性の解明、各動物種の管理を計画するにあたって重要な空間スケールの特定手法の開発、大型動物が森林生態系に与える影響の解明等の研究を行っています。
  • 2.農業生産と生態系保全の両立

    水田生態系は、主食の米を生産する農地でありながら湿地性生物の生息場所として生物多様性保全上とくに重要な生態系の1つといえます。しかし近年では、気候変動や農薬・化学肥料の多投入、耕作放棄地の急速な増加、生物学的侵入などの自然的・社会的な状況の大きな変化により、生物多様性の低下のみならず農業生産の持続可能性への懸念も高まっています。本研究室では、水田および水田を取り巻くランドスケープの生態系機能を活用する新しい農法の提案をめざし、水田害虫とその土着天敵に注目し、環境保全型水田における土着天敵の役割の評価や、様々な空間スケールにおける水田害虫の個体群動態の解明、農水省が所蔵する病害虫発生予察データを使った気候変動と土地利用変化が水田害虫に与える影響の解明等の研究を行っています。
  • 3. 多様な研究手法を用いた生態学研究

    本研究室ではフィールドワークとそのデータの統計解析を基本とし、さらに節足動物類の飼育実験、DNA分析、野生動物の糞・胃内容分析、安定同位体比分析、地理情報システム(GIS)を用いた空間解析、コンピュータシミュレーションなど、研究課題に応じて多様な科学的分析・評価手法を統合的に駆使し、定量化を重視したevidence-basedなアプローチにより様々な研究成果をあげてきました。また行政機関等から「ビッグ・データ」すなわち広域的・経時的に収集した膨大な生物分布データの提供を受け、政策課題にとって有用な情報を抽出するための時空間分析にも取り組んでいます。
  • 4.幅広い分野で適用可能な分析・解析技術の習得

    本研究室で行う演習や実習では、フィールド調査や実験等で得られるデータを適切に分析・処理する技術を身につけさせることに重点をおいています。特にフィールドワークで収集するデータには、取得に伴う誤差のほか、多様な交絡要因の影響が内包されており、仮説を検証するためにはデータの特性に応じた適切な解析法を用いて、あるいは組み合わせて分析することが求められます。保全生態学では、生物統計学や地理情報システムなどの空間解析技術といった多様な分析技術を駆使してデータ解析を行うことが一般的です。それらの分析手法は、自然現象のみならず社会的な現象の分析・評価にも適用できるものであるため、学生の皆さんがそのようスキルを身につけることは、様々なキャリアを築いていく上で意義が大きいでしょう。

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