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授業紹介
疫学・生物統計学研究室
【専門科目の授業紹介】「健康科学概論」竹内 文乃 先生
この科目では、大学でヒトの健康についての科学的アプローチの方法を論じ、考える土台となる「医療倫理・研究倫理」について学びます。また「エビデンス」「医療情報」と呼ばれるものについての学びと理解を深め、身近に存在する健康関連のトピックに着目して文献検索を行い、その解釈・理解を深めます。これらを通じて、健康診断の数値だけではなく、多角的視野から健康に関してとらえ、我々の生活の質(QoL)を高めていくための健康リテラシーを身につけることを目的としています。
溢れる健康情報
健康科学の究極の目標は、QoL 調整生存年(生活の質を加味した生存年)を、できるだけ資源を節約しつつ、大きくすることです。しかし日本では、これから世界初の超高齢社会に入り、さまざまな社会的課題を突き付けられることになるでしょう。一方で、我々が「健康」を志したとしても、インターネットの普及により、巷に溢れる健康情報の中で、何をどう信じればよいのかは、定かではありません。また、生存年を引き延ばすことが、必ずしも本人の望む「健康」とは限りません。そこで「エビデンス」をキーワードに健康について調べて読み解く力を養い、論じていくことが重要とされています。
医療倫理
健康科学を発展させるためには、データを取ることが必要不可欠です。具体的には、新しい薬を開発できた際に、その薬が既存の薬と比較して優れた効果を発揮するのか、安全性に問題がないかなどが考えられると思います。しかし、仮に薬の効果として病気の治療性を考えるとすると、病気を持っている患者さんに、「新薬の効果が知りたいから、あなたには効果がある既存薬ではなく、まだ効果があるか判断できない新薬を飲んでください」とお願いすることは、倫理的に問題があると感じませんか?このように、特に健康科学分野の研究を進めるには、データの取り方や実験の進み方について、特別な配慮等が必要になります。このような配慮や概念の集まりとして、「医療倫理」の理解は重要とされています。
エビデンス
みなさんは子供の頃、「けがをしたら唾をつけておけ」と言われたことはありませんか?最近ではあまり聞かないかもしれませんが、昔は当たり前のように言われていたことだと思っています。しかし、「なぜそうするのか」まで聞いたことのある方は、あまりいないのではないでしょうか。もしかしたら、ある地域の子供たちは、けがをしたときに唾をつけたら、必ずけがが治っていたのかもしれません。だからといって、他の地域でも同じことが言えるでしょうか。また、けがが治ったことと、唾をつけたことは直接関係があるのでしょうか。「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があるように、一見ある現象が何か別の現象を引き起こしたように見えても、実際には直接的な因果関係があるとは言えない、ということは良く起こりえます。では、何を基準に「けがをしたら唾をつければ治る」ということを信じるか、「けがが治ること」と「唾をつけたこと」の因果関係を判断すればいいのでしょうか。
こういったことを判断することに用いるのが、「エビデンス」です。エビデンスの意味を調べると「根拠」などが挙げられますが、医療業界では主に治療方針や薬の有効性を判断するための根拠、とすることが多いようです。では、ある地域Aで「つばをつけると、けが治る」ということがたくさん起きたときに、他の地域で同じことが起こる根拠として、地域Aでのことを「エビデンス」として用いることはできるでしょうか。それとも、地域Aでのことは全く信頼できず、参考にもできないのでしょうか。本講義では「エビデンスレベル」という概念を学び、「エビデンス」についての理解を深めます。
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