授業紹介

【専門科目の授業紹介】「保健医療情報処理」竹内 文乃 先生

この科目では臨床評価・疫学調査、医療改革のためのデータを得る基盤システムとして、電子カルテやレセプト等の「医療データベース」の意義と課題を理解し、プライバシーなどこれらを活用する上での課題や具体的利用事例を学びます。また、「位置情報・空間情報」について、「空間疫学」と呼ばれる疫学研究の具体例とともにGIS(地理情報)データに触れ、その詳細や具体的利用事例について理解を深めます。

保健医療情報処理用候補

 

普及していく医療業界のDX

みなさんは医療業界における「オンライン資格確認」についてご存知でしょうか。「オンライン資格確認」とは、患者の医療情報の活用のために、令和5年4月から保健医療機関・薬局が導入することを原則義務付けられた、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤となるものです(参考:厚生労働省HP)。簡潔にまとめると、医療機関や薬局においてマイナンバーカードなどを用いた本人確認が可能となり、患者の資格情報等(医療保険など)や薬剤情報などの閲覧が可能になります。このように、医療業界において患者情報などの「医療データベース」は近年急速に普及し、医療分野の解析に有用となりました。

 

医療データ利用上の課題

医療データの普及に伴い、推測や検定に用いられる統計手法についての理解が重要視されるようになりました。誤った方法で統計手法を用いると、真実とはかけ離れた推測をしてしまったり、検定者の都合のよい結果に見せかけることが出来たりしてしまいます。例えば、喫煙と肥満の関係性を調べる際に、喫煙している人だけに着目してしまうと、「喫煙と肥満は関係がありそうだ!」と言えてしまうかもしれませんが、喫煙していない人の肥満度も調べると、「あれ?もしかしたら関係ないかもしれない…」のように別の推測ができるかもしれません。このように、設定やデータの扱い方次第で推測の結果が変わることは問題ですが、扱うことのできる医療データが増えた半面、統計的手法の理解不足により、誤った推測をしてしまうことは避けきれない場合もあります。そういった「誤った推測」を根拠に研究を進めてしまうと、取り返しのつかないことになるかもしれません。世に溢れる医療データを、「極力誤らない」ように理解することはとても重要です。

 

授業の特色

本講義では,医療データをはじめ,インターネットにあふれるデータなどを扱う上での倫理や扱い方を,実際に触れながら学びます.統計学を学ぶ上では数学の知識も必要になるので,統計の背景に隠れがちな理論も学ぶことができます.最終的には,学生同士のディスカッションを通じて,自分たちで物事の正否を考える重要性の理解を目指します。