保全生態学研究室の高田まゆら教授らによる斑点米カメムシについての学術論文がScientific Reports(ネイチャー・リサーチ社)に掲載されました。斑点米カメムシ類は籾(もみ)を吸汁することで米粒に斑点を生じさせてしまう稲作害虫です。斑点米カメムシによる斑点が少しでもあると米の等級が下がってしまうため、コメ農家に大きな被害を与えており、この被害は近年増加傾向にあります。今回の研究により、斑点米カメムシ類の発生のタイミングが近年の温暖化に伴って変化していることが明らかになり、これが斑点米カメムシ類被害の一因となっている可能性があることが分かりました。
研究成果を具体的にまとめたプレスリリースは
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概要:
主にカメムシ類が引き起こす斑点米の発生は、コメの品質を落とし、価格を下落させるため、コメ農家にとって最も悩ましい課題の一つです。近年、東北地方では斑点米被害を起こすカメムシ類の発生面積が増加傾向にあり、各地で対策が行われています。しかし、これを引き起こす主要なカメムシ類は複数種にわたること、またこれらの多くは年ごと・地域ごとに発生数が大きくばらつくこと等から、その被害予測は困難でした。東京都立大学大学院、中央大学、農研機構、国立環境研究所等の研究チームは、イネの出穂時期データと気象データに基づくカメムシ2種の発生シミュレーションを組み合わせることで、斑点米はイネとカメムシの成長タイミングが一致したときに発生する可能性が高いことを明らかにしました(図1, 2)。この成果は、斑点米被害の発生を予測すること、さらにはイネの脆弱期間とカメムシの攻撃期間が重ならないように作付け時期や防除時期をコントロールする等、気候変動下における農業の適応策につながることが期待されます。
(注1)本種らは卵で越冬するので、越冬卵から発生した世代を越冬世代、それらが繁殖して生まれた世代を第一世代、それらが繁殖して生まれた世代を第二世代と呼ぶ。