中央大学が主催するビジネスコンテスト【中央大学野島記念BusinessContest*】で理工学部人間総合理工学科、水代謝研究室(山村研)の石井崇晃さん、前田寛明さん、山本迅平さんのチーム、事業名RePublicWaterが、見事優勝を果たしました。
今年のエントリーは総勢41チーム。
その中から書類審査で選ばれた8チームが、2020年12月13日(日)、コンテスト初のオンラインで開催された決勝大会で競いました。
優勝したRePublicWaterが提案したのは、試験紙とスマートフォンがあれば安価で素早く簡単に水質を検査することができる、水質測定アプリ(名称:WaterChecker)の開発と、それを生かした事業計画でした。
今回、チームのリーダーである石井崇晃さんにインタビューをさせていただきました。
Q.石井さんは普段どのような研究をしているのですか?
A. 私は『水処理とAIを組み合わせる』という研究をしています。
この研究の一番の魅力は、専門家を必要としない水処理ができる可能性を持っているところです。
Q.現在の水処理について、問題点を感じていたそうですね?
A. 現状の水処理は、それぞれの浄水場職員がこれまでに培ってきたノウハウによって行われています。しかし、どんなに技術が進歩しても、一般家庭の蛇口から出る水質を知ることはできません。そこを知ることで水処理能力の向上を目指せるのではないかと思うのです。
Q.水処理にAI技術を使うことでどういう効果が期待できるのでしょうか?
A. 私の研究では、現場の技術者の知見や実際のデータを活用したAIモデルを構築しています。これが完成する事で技術者の少ない地方でも専門家がいるような処理が可能になると思います。
Q.ところで、石井さんは修士を取得したら就職をしようと考えていたそうですが、なぜ博士へと進む事を決めたのでしょうか?
A. 水処理の企業でもAIに関して少しずつ研究はしているようですが、まだまだ主力となる事業に多くの力を入れており、現状ではAIの研究の規模は小さいように感じます。
私の『水処理とAI』に関する専門性はまだまだプロフェッショナルと言える領域ではありません。そのため、今、仮に就職した場合AI技術を仕事にする事は難しいと思ったのです。
Q.ビジネスコンテストに参加を決めたのは何故ですか?
A.博士に進むことを決めたと同時に、この研究がビジネスになるのではないかと考えました。そんなときに大会の存在を知り、チャンスだと思い、参加を決めました。
Q.今回優勝した企画の一番の魅力を教えてください。
A.アプリと試験紙さえあれば、誰でも簡単に、高速で、安価に水質を測定できるということです。この技術を使えば浄水場では測定時間の短縮やコストカットができますし、一般家庭では水質への不安の払拭が可能になります。
Q.苦労した点があれば教えてください。
A. 研究室では、研究をどうやって販売するのかを考えたことがなかったので、事業計画をそもそもどの様に考えればいいのかが分からずに苦労しました。それと、修士としての研究もあったため、スケジュールの調整は非常に苦労しました。
Q.そして見事優勝されたわけですが、コンテストではどのような点が評価されたと思いますか?
A. 実際にアプリを開発した事と、実際に実験によって得られた水質測定のモデルがあったことだと思います。
今回の大会のテーマは〈Move on your will〉だったこともあり、〈実際に行動する〉ということを評価しているように感じました。
Q.石井さんは学生が起業するメリットを感じているそうですね?
A.学生は起業に関して、会社の設立費用さえあればデメリットはありません。そして、学生は多くの場所で無償や割引の支援(特許申請やソフトウェアの無償利用など)を受けることができます。なので、このチャンスを最大限に活用していきたいと思っています。
Q.今後の予定を教えてください。
A.直近の目標は会社を設立すること(2021年4月)、特許出願と更なる能力の向上です。大会の時には経費や販売経路など大雑把にしか考えることが出来ていませんでしたので、これから一つ一つ解決していきたいと思います。
そして前田寛明さん、山本迅平からも一言ずつになってはしまいますが、感想を頂きました。
「今回優勝できたのは、メンバー全員が提案技術で水業界を変えられるという強い想いがあったからだと思います。現在、合同会社を設立しています。今後は、この技術をいち早く皆様に提供できるように、会社を支えていきたいです」(前田寛明さん)
「提案するビジネスモデルに、いかに説得力を持たせられるかを意識して取り組んだ事が、評価された一つの要因だったと思います。現在はアプリ公開に向けて急いでコーディングをしています。完成したら実際に簡易水道で水質管理に使って欲しいです。そして、いずれは一般家庭でも当たり前に使われるようになってくれたらと思います」(山本迅平さん)
*中央大学野島記念BusinessContestは、中央大学が主催するコンテストです。商学部のOBである野島廣司氏(株式会社ノジマ代表執行役社長)の「中央大学からビジネス界で活躍する人が増えて欲しい」という想いと篤志を受け2007年から開催しています。
事業計画書作成が始めての方でも必要なスキルが習得できるよう、事業計画書の書き方講座、アイデアデザイン講演会、ビジネススクールの協力によるメンタリング等を実施しており、初心者へのサポートも大変充実しています。