就職・進路
活躍する卒業生就職・進路状況

活躍する卒業生ー京都府立医科大学附属病院臨床研究推進センター 特任助教 堀口 剛 さん(2019年修士修了、横浜市立南高校出身)

人間総合理工学科の卒業生は、在学中に身につけた多様な学びを反映し、多様な分野で活躍しています。そんな卒業生の活躍を紹介し、キャリアパスの参考にしていただく「活躍する卒業生」シリーズ。
今回ご登場いただくのは、医大の特任助教として働く堀口剛さんです。在学中に培った生物統計学の知識・技術によって、医大の臨床研究を支えています。


堀口 剛さん


Q.まず、現在のお仕事について教えてください。
A.医大の附属病院で、統計解析を担当しています。

臨床研究や治験を行う研究者を支援する組織(一般的にARO: Academic Research Organizationと呼ばれます)に所属し、統計解析担当として働いています。主な仕事内容は、研究計画書の作成支援、解析計画の策定、統計解析の実施、解析結果の報告などです。学生の皆さんにとっては難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「病院などで行われる研究で得られたデータを解析する仕事」です。データを集めた後だけでなく、データをどのように集めれば良いかを考え、適切な研究デザインを設定することも重要な仕事になります。

Q.就職活動中、大学病院を志望した理由は?
A.培った生物統計の知識・技術を活かしたいという思いから。

基本的には、大学で得た知識や技術を活かせる仕事に就きたいと考えていました。特に、生物統計学の領域は学べる大学が少なく、国内での専門家の人材不足が言われていますので、そのような思いは強かったと思います。選択肢としては、CRO(Contract Research Organization)や製薬企業等への就職もありましたが、アカデミアの方が生データに触れる機会が多いなど、幅広く経験が積めるのではないかと思い、大学や医療機関等への就職を目指しました。

Q.仕事をする中で心がけていることはありますか。
A.分野が異なる研究者にも分かりやすく説明できるよう意識しています。

統計解析の結果は研究成果に直結するため、間違いのないように業務を遂行することを常に考えています。また、研究には様々な立場の人が関わっており、中には統計を専門としていない研究者もいます。そういった方に対して、解析結果の解釈などを分かりやすく伝えられるように心がけています。

Q.失敗談などもあれば教えてください。
A.大きな失敗はありませんが、細かいミスは何度かあります。以前、クラウドストレージに保存されている共有ファイルを誤って更新してしまったことがありました。他の方の更新内容を削除してしまっていたので、指摘されたときはとても焦りましたが、最終的には復元できたので良かったです。こういったミスが起こらないように工夫することは当然ですが、間違えてしまったときは同僚や上司にすぐ報告し、解決案を検討することが重要だと思っています。

Q.大学生のころはどんな学生でしたか?
A.授業態度については普通だったと思います。課題等には真面目に取り組んでいましたが、授業中に積極的に発言するようなタイプではなかったです。サークルには入っていなかったので、空いた時間では家庭教師などのアルバイトをしていました。また、趣味で風景の写真撮影をしていたので、週末はよく富士山を撮りに静岡や山梨に行っていました。写真を通して普段の生活では出会うことのないような方々と繋がることができたので、この趣味はこれからも続けていきたいと思っています。

Q. 人間総合理工学科で得たものは何ですか?
A.「多様な領域の知識、そしてゴールまでの道筋をデザイン(設計)する力」です。

「知識とデザイン」でしょうか…。人間総合理工学科は、一つの学科でありながら多様な領域を学ぶことができ、必修科目を一通り履修することで各領域の基礎的な知識を身に付けることができました。“新しいアイディアは既存のアイディアの組み合わせ”という言葉を聞いたことがあります。一見自分にとって関係ないような知識でも、それらの組み合わせによって新しい考えや問題解決の糸口が見つかるのだと思います。そうした知識を前提として、社会にとって意味のある仕組みやモノ、サービス、研究などに応用するための方法を人間総合理工学科の演習授業で学びました。

基礎から応用に結び付けるためには、ゴール(目標)を設定した上でそこまでの道筋をデザイン(設計)する必要があります。臨床研究においても、適切なエンドポイント(評価項目)を設定し、統計解析を含めて具体的な研究方法をデザインすることが重要になってきますので、人間総合理工学科で得た「知識とデザイン力」は、現在の仕事にも活かされていると思います。

Q.大学のときにやっていてよかったことはありますか。
A.専門的な話になってしまいますが、やはり統計ソフトの使い方について学べたのはよかったと思います。業務では主に統計ソフトを使用するので、その基礎を大学のときに学習できていたのは大きかったです。

Q. 逆に、これをやっておけばよかったと思うことは?
A.機械学習やAIについてはもう少し勉強しておけばよかったと思います。疫学や臨床研究の分野でも機械学習やAIを用いた研究が増えてきており、学会等でよく目にしますが背景知識があまりないことで深くまで理解できないことがあります。統計学とは考え方や表記法が異なる部分があり難しいですが、少しずつ勉強していこうと思っています。

Q. 同じ業種を目指す学生に、メッセージをお願いします。
A.「医療に関する新たなエビデンスを創出する仕事」は、とてもやりがいがあります。

まずは学生生活を楽しんでください。そして、授業を通して幅広い知識を習得し、卒論・修論等を通して生物統計学に関する専門的な知識や技術を磨いていってください。

仕事なので難しいことも多々ありますが、私の仕事は「医療に関する新たなエビデンスを創出する」という意味でとてもやりがいのある仕事です。生物統計を活かしたい、医療系の仕事に携わりたい、とお考えの方は、こんな進路もあるんだと参考にしていただければ幸いです。