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保全生態学研究室

Human’s coordination vol.8 「中島博士の昆虫雑記1『昆虫とはどんな生き物か?』」

人間総合理工学科の財産は幅広い教育人財!みなさま学生の教育を支える教育技術員にも多彩な才能をお持ちの方々がいらっしゃいます。中でも生態学の研究者でもある中島一豪博士は、昆虫のエキスパート!この才能を活用しないわけにはいかない、というわけで、今回から中島博士に昆虫について大いに語っていただくことにいたしました。これを機に知っているようで知らない昆虫の世界に足を踏み入れてみてはいかが?

はじめに

私たちは毎日多くの生き物に囲まれて生きています。思い起こしてみてください。朝起きてから寝るまでの間、家の中や通学路などで、毎日それなりの数の生き物と出会っているはずです。恐らく、そのなかでも高い頻度で出会っているのが昆虫という生き物です。地面のアリや道端の花に来るチョウを見たことはありませんか? 夏には頭上でセミが鳴いていませんか?私たちは知らず知らずのうちに、昆虫と共に日々を過ごしているのです。今回はそんな、知っているようで知らない昆虫についてお話します。

 

虫と昆虫の違い

まずは昆虫の定義について説明しましょう。多くの人は虫と昆虫をほとんど区別していません。しかし、虫と昆虫は厳密には違います。昆虫は特定のグループの虫を指す言葉です。厳密には、昆虫は節足動物に分類され、体が頭部・胸部・腹部に分けられ、胸部に3対の脚(あし)を持つものをいいます(図1)。つまり、昆虫にはアリやチョウ、カブトムシなどが含まれることになります。一方で、虫は人類・獣類・鳥類・魚介以外の小動物の総称です。この定義では、トカゲやミミズ、クモなども「虫」に含まれます。

 

【図1:虫と昆虫の比較】一見するとクモやムカデも昆虫の仲間に思いがちですが、クモは頭部と胸部が一体化しており、脚も4対です。ムカデの体は頭部と胴部(どうぶ)に分かれており、体の節ごとに1対の脚をもっています。昆虫と他の生物の遺伝子を比較した研究では、昆虫はクモやムカデなどより、エビやカニなどの甲殻類に近いことが分かっています。


 

実はすごい昆虫

昆虫の定義が明らかになったところで、彼らについてもう少し見ていきましょう。昆虫には他の動物と比べて突出した点がいくつもあります。今回はそんな名誉ある?昆虫の称号を2つご紹介します。

 

・動物界No.1の種数

昆虫は他の動物と比べて種類の豊富さが突出しています。現在、昆虫には約100万もの種が知られています。人を含む哺乳類が約6000種、鳥類が約9000種なので、昆虫の種数が桁違いに多いことが分かります。また、昆虫はその多くが未発見であると予想されており、実際には約550万種になるという予測もあります。つまり、種数だけで見ると、地球上の動物はほとんど昆虫なのです(図2)。

【図2:昆虫はこれからも増えてゆく】 昆虫は毎年約1000種が新種記載されており、今後も増えてゆくと予想されます。野外で新たに見つかるものに加えて、遺伝情報を用いることで、これまで同種だと考えられていたものが複数の種に分かれることもあります。こうしたことから、生物の種数は調査された年や分類の基準によって違っています。上のグラフは2011年と2018年の研究を参考に、おおよその割合を求めて作成しました。興味のある方は最新の研究を調べてみてください。


 

・空への進出一番乗り

昆虫は空を飛んだ最初の動物と言われています。動物の多くが空を飛び始めたとされるのは約9000万年前ですが、翅の生えた昆虫の化石は約3億年前の地層から見つかっており、その頃には空に進出していたと推測されています(図3)。他の生物よりも早い段階で空に進出したことが、その後の繁栄につながった可能性があります。空を飛ぶことで、外敵から逃げたり、新たな生息地にたどり着ける確率が高くなるからです。

 

【図3:最古の空飛ぶ昆虫】 古代の昆虫の姿は化石から想像するしかありませんが、研究者の努力のおかげで、きれいな状態の化石も発掘されています。絵の昆虫は約3億年前に存在したとされるムカシアミバネムシの仲間の想像図です。他にも様々な形の飛ぶ昆虫がいたとされていますが、多くは絶滅してしまったようです。


 

今回は昆虫の定義と、あまり知られていない昆虫のすごい称号を 2つお伝えしました。この他にも、昆虫には様々な魅力が秘められています。今回の記事で昆虫に少しでも興味を持っていただけた方は、図鑑や野外で是非昆虫を観察してみてください。まだ知られていない種や生態を発見することができるかもしれません。