竹内先生

竹内 文乃 准教授

Ayano Takeuchi

疫学・生物統計学研究室

<専門分野>
疫学統計、生物統計学
<研究テーマ>
大規模疫学研究のバイアス補正
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Profile :
疫学研究、観察研究のデータ分析及びそのための統計解析手法の検討が研究テーマ。神奈川県出身。東京大学医学部 健康科学・看護学科 疫学・生物統計学教室卒業。同修士課程・博士課程を経て助教に着任。その後、国立環境研究所研究員、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室講師(医学部)を経て2022年4月に中央大学に着任。博士論文のテーマはPM2.5による健康影響の地域差を検出するための統計モデル開発。共著書には「保健医療従事者のためのマルチレベル分析活用ナビ」(診断と治療社)「放射線 必須データ32:被ばく影響の根拠」(創元社)がある。 *現在は健康総合科学科

学生に期待する
3つの資質

  • 資質1隣接分野への「好奇心」
  • 資質2能動的な行動を伴う「探求心」
  • 資質3広い視野で問題を捉える「俯瞰力」
健康情報を適切に解析して信頼できるメッセージとして発信する。
 

エビデンスの適切な評価

近年「エビデンス」という言葉が広く認知されるようになってきたが、人の健康に関わるエビデンス(根拠)を確立するのは容易ではない。問題を明らかにし(フレーミング)、因果関係の仮説を立て、データを収集して検証を繰り返し、エビデンスとして確立していく過程と、エビデンスレベル(根拠の強さ・確からしさ)や研究デザイン・解析の特徴や限界を理解しすることで、ネット上に氾濫する様々な情報の中から系統的に適切なエビデンスを収集することが可能になる。

エビデンスを高める研究計画の提案

近年、様々な情報がデータベース化され、様々に公開・利用が可能になってきているが、計算機科学で「Garbage In, Garbage Out」と言われるように、欠陥のある入力データからは意味のある結果は得られない。エビデンスを確立するための研究には、事前に評価したいものを、比較可能性をもって評価するために十分な研究計画を準備する必要がある。疫学研究や臨床研究においては新しい研究デザインの提案も進んでおり、実現可能性と科学的妥当性のすり合わせを事前に十分に行う必要がある。

生物統計学的手法によるバイアスの補正

人の健康に関わるエビデンスを確立する難しさに、因果関係が歪められる現象(バイアス)の存在が挙げられる。例えば、すでに健康状態に問題を抱える人ほど健康診断を受診しなかったり、健康リスクが高い人がそのリスク項目を質問紙票に正確に回答しなかったりすることは多分に起こり得る。また、調査に同意して参加する人は健康意識が高い人が多いことも知られる。これらの事情それぞれがもたらす因果関係の歪みが積み重なると、研究の再現性・一貫性を損なうことにつながる。こういった偏りを数式的に定量し、バイアスを示す外部情報を利用することで、生物統計学的なバイアス補正が可能となる。

感度解析の実施

人の健康に関わる研究には様々なバイアスが存在し、また生物統計学で用いるモデルには様々な仮定が必要となる。特にバイアスについては参加しなかった人や記入されなかったデータ等「研究データとして存在しない情報」を必要とするため、この手法を使えばバイアスが完全に補正される、などという定石は存在しない。外部情報や仮定を様々に変えて、結果の頑健性を確認すること、また数値実験(シミュレーション研究)によって手法の特徴を明らかにすることが実データをより適切に解釈するために必要となる。