山村寛 准教授

Hiroshi Yamamura

水代謝システム研究室

<専門分野>
環境工学
<研究テーマ>
水処理技術・膜ろ過

Profile :
香川県出身。2004年北海道大学工学部卒業後、2006年北海道大学工学研究科博士前期課程修了、2008年北海道大学工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。旭化成ケミカルズ株式会社膜・水処理事業部、中央大学理工学部助教を経て、現職。現在の研究テーマは、分離膜の閉塞を抑制する技術の開発や膜を使った微細藻類の分離などを行う一方、埋め立て浸出水の処理や海水淡水化膜の開発に関する研究も行っている。主な著書としては、『水処理膜の製膜技術と材料評価』がある。アウトリーチ活動も積極的に行っており、科学技術コミュニケーターとしての資格を持つ。

学生に期待する
3つの資質

  • 資質1
  • 資質2野望
  • 資質3一人称
「水」の理想的な循環を目指して。

エンジニアリング的発想で、社会の問題に挑む

理工系の学びには「エンジニアリング」と「サイエンス」があります。エンジニアリングが“解決しないといけない問題”に取り組むことであるのに対し、サイエンスは“解決したい問題”に取り組むことを表します。

持続可能な社会の実現は、まさに“解決しないといけない問題”。エンジニアリング的な発想が求められます。研究や指導のうえでも、エンジニアリング的な思考の基礎となる「問題解決能力」に重点を置き、世の中にあふれる難問に立ち向かう人材を育成したいと考えています。

より良い水の循環を考える『都市代謝マネジメント』

私が専門としているのは「人と物質・エネルギー」という分野で、水の質と量を管理しながら水資源を循環させる『都市代謝マネジメント』を扱っています。
日本は水の豊かな国ですが、世界には清潔な水が手に入りにくい国も多くあります。特に目覚ましい発展を遂げるアジア各国ではこれまでにないほど急速な都市化が進んでいますが、その結果、水やエネルギーの大幅な不足や環境破壊、衛生状態の悪化が同時進行しており、都市の持続発展の可能性に赤信号が灯ろうとしています。

そこで、現代のニーズを満たしながらも次世代の可能性を脅かさない発展を遂げるための社会的基盤を支える技術を探索・開発・評価することと(ハード面)、それを現代の都市にうまく適用させること(ソフト面)を考えていきます。これらハード面からソフト面までのシステムを構築することを『都市環境マネジメント』と呼んで我々の役割と捉え、“水を浄化し、活用する”ための技術を研究します。
例えば、土地が少ないシンガポールや人口が多いカルフォルニアでは下水は貴重な資源です。下水を“膜”で浄化し、農業用水や飲料水、景観保全用水に再利用することで逼迫する水資源に応えようとしていますが、実現するには多くの問題が立ちはだかっています。

他分野との協働で期待できる研究の発展

たとえば「下水を使う」という言葉のインパクトが強烈なために、住民の反対に合うケースが少なくありません。本学科の『人を知る・測る』の分野と協働することで、住民に受け入れられやすい言葉や処理プロセスを選択し、合意形成にむけて具体的に歩を進めることが可能になります。また、再利用水は景観保全用水に利用できますが、その効果や必要性はまだ明らかにされていません。

本学科の『人の生活環境』の分野と協働し、取水制限すべき地域や下水の流入によって生態系が破壊された地域に下水の再利用水を注入することで、きれいな水辺の復活や豊かな生態系の復元が期待できます。
下水の再利用水が健康に与える影響は、まだ完全に明らかになっていません。
本学科の『人の健康』の分野と協働することで、疫学的に下水の再利用が健康に与える影響を明らかにすることができ、技術の安全性(または危険性)を証明することができます。

豊かで快適な人間生活の実現に具体的に働きかける研究を

人間総合理工学科で学ぶ新しい価値観(持続可能性)はこれから世界基準となるもの。この価値観と分野を横断するマルチ工学マインドを持つ人材は、どのような分野においても必要とされます。都市プランニングやコンサルティング業界では、世界に飛び出して問題解決を遂行できる人材を必要としており、ニーズがあるのに対応できる人材が少ないのが実情です。

人間総合理工学科で学ぶことで、人間の生活をより豊かで快適にするための智恵を実践に生かすことが可能になります。皆さんとの出会いが分野の発展につながることを期待しています。

山村先生の研究を理解するためのキーワード4

  • 1. 水代謝循環

    アジア各国では都市が急速に発展し、 その影響で大規模な資源の不足が起こっています。「人が快適に過ごすこと」と 「自然環境に及ぼす負担を最小限にすること」を同時に満たす循環型都市の実現こそが今求められている水代謝循環といえます。また、それを再構築するための『インフラ』と、それを支える『技術』を探索・開発・評価し、現代の都市にうまく組み込むことが、都市代謝マネジメントを担う我々の役割です。
  • 2. 安心安全な飲み水

    安全な水から『絶対に』安全な水へ。「膜分離」という技術が水に対する安心感を大きく前進させました。髪の毛断面の1/100以下の孔がたくさん空いた「分離膜」を利用することで、海水中から塩分だけを取り除いて純水を製造出来るほか、下水中の細菌や微量汚染物質などの有害成分を完全に取り除き、飲み水として再生出来るのです。「必要な水質を、必要な量だけ、必要な所に配分する」次世代の水代謝システムの開発に向けて、山村研究室では鋭意研究中です。
  • 3. 下水道の付加価値付与

    実は下水中には様々な有用元素(炭素、窒素、リン)等が含まれています。下水はこれまで「処理しないといけないもの」と思われて きましたが、これからは「有効に使う必要のある貴重な資源」という発想の転換が必要です。下水道の位置づけを変えることで、その価値を大幅に向上することが可能となります。下水から資源を回収するためには、これまでの下水処理プロセスからの大幅な転換が必要となります。山村研究室では、循環型社会の構築に向けた下水処理水中からの有用成分の回収プロセスの開発に取り組んでいます。
  • 4. 途上国の健全な水環境

    国連では水問題の解決に向けて様々な取り組みを実施しています。水資源の不足は紛争につながり、経済発展の妨げになることから、非常に重要な問題として認識されているのです。中央大学ではアジアの水問題を解決するスペシャリスト育成を目標として『国際水環境人材育成プログラム』を推進しており、留学生が日本人学生と切磋琢磨しながら水環境の先端技術を学んでいます。彼らが自国に帰って、学んだ知識を次世代に引き継ぐことで持続可能な社会へと繋がることを信じています。