人間総合理工学科の就職

人間総合理工学科は2013年に誕生した比較的新しい学科です。人間の生活、社会、環境に関わる複合的な学びを実践することはわかっても、就職先のイメージがつかみにくいのではないでしょうか。たとえば、情報工学科ならばIT企業、精密機械工学科ならば機械メーカー、都市環境学科ならばゼネコンといったような「分かりやすい就職先」はありません。では、実際のところどうなのでしょうか?これまでの就職状況を振り返ってみると、卒業生は「人間の生活、社会、環境に関わる多様な分野」へ進出していることが明らかになりつつあります。

人間総合理工学科では、2017年に1期学部生を2019年に1期院生を社会に送り出しました。学部卒、院卒とも就職率は極めて高く、いわゆる難関企業、有名企業へも多数就職しています。就職担当者の感触としては、GMARCHの一般的レベルを超えた実績が得られているという印象です。一方で、「こんな企業もあったのか」と就職担当者が驚く穴場企業を見出す学生もいます。

この背景にあるのが、「課題解決力の育成」という本学科の教育理念です。人間の生活、社会、環境をとりまく諸問題の解決には多様な視点からのアプローチが必要です。異なる学問領域に触れることによって、当学科では一つの分野にとらわれない柔軟な思考法が自然に身につきます。また、当学科ではアクティブラーニングが盛んであり、レポート課題(文系よりも多い)、プログラミング課題、ビデオプレゼン、グループディスカッション、プレゼンテーションなど、多様なインタラクションとアウトプットを通して学生の能力は鍛えられます。見方を変えると、就活で必要なエントリーシート作文、グループディスカッション、面接などに必要なスキルは日ごろから磨いているので、おのずと就活力が高くなるのも当然でしょう。

一方で、当初は「専門性が活かせないのでは?」という心配も周囲から寄せられましたが、蓋を開けてみるとかなり専門性の高い就職も目立っています。日本の大学教育の特徴は、4年生から院生にかけての研究室での高密度なトレーニングにありますが、当学科を構成する研究室は実はハイレベルなものばかり。特に院生は、恵まれた教育研究環境で主人数教育による研究トレーニングを積んでいますので、高レベルの専門性や技術スキルを活かした就職も可能です。もちろん、研究自体が高度な情報収集、論理的思考、実証、プレゼンテーションから成り立つ最高レベルの知的トレーニングですので、ジェネラリストとしての採用にも威力を発揮します。

さらに、国内有数の手厚い就職サポートを誇る理工学部キャリアセンターの活用に加え、当学科独自の就職サポートが得られます。すべての就職希望者は、就職担当教員2名との面接を経て就活に臨みます。また、就活に備えて、専用SNSからの独自の情報提供と、インタラクティブなキャリア相談が得られます。これらの一般的なサポートに加えて、研究室独自の就職相談も得られますので、三重のキャリアサポートが得られます。

とはいえ、就職先が学科推薦で自動的に決まったり、学生の意思に反する就職先を押し付けられるということはありません。むしろ、学生の自主性を尊重し、就活における戦力を養成するコーチングを行うのが当学科の方針です。あくまでも、学生のキャリアにおける主役は学生自身という考えです。


研究室ごとの就職先イメージ

人間総合理工学科は、8つの研究室があります。それぞれが別の分野の研究を展開していますので、就職先や進路も研究室ごとの個性を反映して多様になっています。まずは、それぞれの研究室の就職先イメージを概観してみましょう。

水代謝システム研究室では、民間企業、公務員、起業、海外大学院への進学など、卒業生の進路は多岐にわたっています。一番多い進路が民間企業への就職です。研究室の学生が水関連企業への就職を希望する場合、最大限、就職活動を支援しています。水に係わる仕事は、景気の波に影響されず安定し、やりがいのある仕事が多いのが特徴です。また、処理などの技術的な仕事だけでなく、経営、営業、企画、IT、広報、計画、教育など、様々な分野の職種に就いています。必ず皆さんが活躍できる場が見つかるはずです。

景観環境科学研究室では、人と自然の関係を定量的に把握するための知識と技能を取得し、判断力と問題解決力を身に付けます。学部、大学院の研究においては自然生態系から農地や森林、都市まで対象とし、現場における観測や実験と共に空間情報を活用します。国内外の専門家との交流を通じて科学的理論の実社会への応用について学習し、企業や行政において様々な立場で活躍できるようになります。就職先としてはIT・データサイエンス、街づくり・デベロッパー、工学技術系などが多いです。

生命健康科学研究室では「人の生命と健康を軸としたものづくりと社会づくり」のため、安全管理や救急救命の観点から、主体性のあるテーマで探究心を育みます。AI、VRなど先端技術を用いた先進的な研究手法にも挑戦し、現代社会の多様な課題を解決していきます。研究の大前提「現場(フィールド)」主義を貫いた行動ある知性は、大学院進学をはじめ、IT、メーカー、メディア、メディカル、金融、官公庁・財団、消防・警察、航空等、幅広い分野で活躍しています。

環境・エネルギー研究室では、地球環境の保全を目指してエネルギーの流れを調査し、水素製造・利用、二酸化炭素回収技術の確立に貢献します。また、環境中に捨てられている低温エネルギーを有効利用し、街作りや安全・健康な空調システムを創るために、エネルギー貯蔵・輸送技術も提案しています。4年生でも学習内容の社会的位置付けを確認するため学会発表を推奨しています。大学院への進学を推奨していますが IT、メーカーを目指す学生も多くいます。

保全生態学研究室では、「人間と自然の共生」にかかわる喫緊の社会的諸課題の解決に貢献するための知見や技術を身につけます。複雑な自然生態系を対象とした研究を通して、仮説の立案、フィールド調査・実験デザインの構築、仮説検証のための統計モデリングなどの手法を身につけることができます。多くの学生は、大学院進学に加え自然環境や緑地等に関連する政策・計画・評価に関わる官公庁(公務員等)や環境コンサルタント会社、化学分析会社などを目指しています。

応用認知脳科学研究室ではプロフェッショナリズムを意識し、精緻な論理的思考、綿密な実験・調査計画法、的確な統計解析能力を獲得します。学部ではTOEIC700点と統計検定2級が必須。学生同士の勉強会も盛んで、研究スキルを磨きます。院進学が推奨ですが、野心的な学部就職も可能です。高度なコンサルティング能力を反映し、ITコンサルタント、IT、メーカー、調査、デジタル広告・マーケティング等に加え、ベンチャー企業への挑戦も盛んです。

都市生態学研究室の学生は、環境科学やデザイン、認知科学、そして空間情報科学など様々な分野の知識を応用し、都市計画における自然の活用方法を追求します。関連研究や事例の多くが海外で、学生自身も留学や語学学習などの国際的経験を重視しています。LEED(都市開発の環境評価を行う国際資格)と宅建(宅地建物取引士資格)の勉強会が盛んです。大学院進学に加え、環境コンサルタント、環境デザイン、ディベロッパー、ITコンサルタント、総合電機メーカーなどを目指す学生が多いです。

生物統計学研究室は、2022年度に新規採用教員の下でリニューアルして再開いたします。詳細は新任教員の採用後にお知らせいたしますが、生物統計学の専門的知識を活用して、医療系分野、データサイエンス分野への進出が期待できるでしょう。


就職先の実際

それでは、これまでの当学科での主な就職先を、様々な角度から紹介してみましょう。

就職先ランキングトップ3
1位 NEC 16名
2位 フューチャーアーキテクト 6名
2位 日立製作所 6名

これまでの累計では、NECへの就職が突出して多くなっています。保護者の方々にとってNECは総合電機メーカーという印象が強いと思いますが、現在では、社会インフラを支えるインフラとITソリューションを提案する企業へと変貌を遂げています。2位の日立製作所も同様です。同率2位のフューチャーアーキテクトはITコンサルティングの有力日系企業です。当学科における教育の特徴である課題解決力とコンサルテーション能力が、これらの就職実績に反映されていると言えるでしょう。

総合電機
NEC*、日立製作所(学部、院)*、富士通(学部、院)*、三菱電機*、キオクシア、パナソニック(院)、富士電機等(複数名入社の企業は*で示しています。以下同様)

理工系学生の人気就職先である総合電機企業への就職は比較的安定しています。近年ではこれらの企業はIT系にシフトしつつありますので、システムインテグレーター、システムエンジニアとしての就職が主流です。院卒の場合は、研究職採用もあります。

ITコンサルティング、シンクタンク
フューチャー・アーキテクト*、NTTデータ*、アクセンチュア*、シンプレクス*、デロイト・トーマツ・コンサルティング*、PwCグループ(院)*、VMWare(院)、EYコンサルティング、SAPジャパン、大和総研、日本IBM、野村総研(院)、みずほリサーチ&テクノロジーズ等

様々な社会的要請をIT技術で解決するという企業で、コンサルテーションを重視するという点で、IT系企業とは若干異なる位置づけです。コンサルテーション能力とIT技術の総合的スキルが要求される企業です。一般的に難易度の高い企業が多いですが、人間総合理工学科の学びとの相性はよく、安定的な就職実績が得られています。資格として、基本情報技術者、統計検定2級、英語力などが重視されます。入社時に簿記2級取得が義務付けられる企業もあります。

IT系
SCSK*、NECソリューションイノベータ-*、、JSOL、TIS、第一生命情報システムズ*、農中情報システムズ*、NS-SOL、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニッセイ情報テクノロジー(院)、日興システムソリューションズ、日本ユニシス、日立システムズ、日立ソリューションズ、富士通エフサス等

当学科のカリキュラムは必ずしも情報系に特化しているわけではないのですが、プログラミングの基礎は身に着けており、統計が得意という学生が多いこともあり、システムエンジニア(SE)としての就職も多くなっています。実際のSEの仕事は、顧客やユーザーとのコミュニケーションやプレゼンテーションの能力が重視されるため、当学科で得られたスキルが活かされやすい職種でもあります。基本情報技術者資格の取得は絶大な効果があります。ITパスポートはあった方が多少有利です。

各種メーカー
LIXIL(学部、院)*、NOK、カゴメ、ダイハツ工業、ファーウェイ、本田技研(院)、ヨネックス等

一般的な理系のモノづくり企業への就職も一定数あります。学部生はエンジニア職が主です。院レベルの場合、開発や生活者研究などの専門分野の採用になっています。難関企業(職種)への就職が目立ちます。

金融系
みずぼ銀行*、三井住友銀行*、あおぞら銀行、アフラック、岡三証券、ガストディ銀行、きらぼし銀行、信金中央金庫、東京スター銀行、みずほ証券、三井生命、明治安田生命等

意外なことに、金融分野への就職は強いといってよいでしょう。金融系の業務は数値理解・運用能力(ヌメラシー)が重視され、その上に顧客とのコミュニケーションが必要になる場合が多く、当学科の教育とは相性のよい分野となっています。難関のメガバンクが目立ちますが、国家予算規模の資金を扱う投資銀行などにも進出しています。

デジタル広告・マーケティング
IMJ*、アイレップ(院、学部)、電通デジタル*、セプテーニ等

比較的新しい分野ですが、インターネットを活用した広告とマーケティングを実践する企業として、従来型の広告代理店をはるかに上回る成長を見せています。デジタルリテラシー、ヌメラシーの基礎の上に、人間の行動にアプローチするという点で、当学科の学びが活かされる分野です。

不動産・デヴェロッパー
イオンモール、グローバルリンクマネージメント、大和ハウス工業、野村不動産、野村不動産アーバンネット、三井不動産リアルティ、UR都市機構等

「まちづくり」への興味から本学科に入学する学生がまず最初に考える分野です。潜在的には相性がよいはずですが、文系の牙城となっているため、理系であることは全く有利になりません。特に大手デヴェロッパーを狙う場合は、TOEIC800点レベルの英語力、宅建合格等の準備が必要です。

リサーチ系
インテージ(院)、ゼンリン、帝国データバンク、マクロミル(院)等

そもそもの企業数が多くありませんが、人間の行動分析、消費者、生活者動向の統計調査など当学科の学びとの相性がよく、比較的良好な就職実績を残しています。

設備系
高砂熱学工業*、NTT東日本(院)、九電工、JR東海、JFEエンジニアリング、ソーラーフロンティア、明電舎等

理系の学生の典型的就職先です。エンジニア系の採用が多く、一見、当学科は他学科より不利に思えそうですが、特に問題なく採用に至っている場合が主です。難関企業への採用が目立っています。

医療系
EPS*、医薬品医療機器総合機構:PMDA (院)*、MCヘルスケア(院)、大塚製薬、杏林製薬、ココカラファイン(院)、シミック、ゼリヤ新薬、SOMPOケア(院)、第一三共製薬(院)、日本光電、PRAジャパン(院)、千葉大学病院臨床統計専門職員(院)、京都府立医科大助教(院)等

医療系分野との共同研究を行っている研究室が多いため、この分野への就職も多くなっています。特に臨床試験のコーディネーター(CRO)の就職に強みがあります。院卒の場合は、教員、研究職、医療系システム開発、コンサルティングなど専門性の要求される職種が主です。

水、環境、化学系
アジア航測(学部、院)*、ヴェオリアジャパン*、NJS*、住友林業緑化(学部、院)*、オルガノ(院)、NJS、協和コンサルタンツ、水ing(院)、東京設計事務所、日水コン(院)、日本工営(学部、院)、三菱化学(院)、メタウォーター(院)、八千代エンジニアリング等

環境系の研究室に関しては、水環境、環境系のエンジニアとコンサルタントは本学科の専門性が最も活かされる分野です。毎年、コンスタントに就職実績が得られています。おおむね、学部卒がコンサルタントで、院卒がエンジニアという位置づけです。いずれの場合も、技術士一次試験(技術士補)の取得は必須と考えた方がいいでしょう。

専門商社
加賀電子(院)、キャノンマーケティング、三洋貿易、蝶理、長瀬産業(院)、マクニカ等

志望者は少ないですが、当学科の強みが極めて発揮される分野です。総合商社の場合は、文系の最優秀層との競り合いになって、ほとんどの場合競り負けますが、理系の専門商社の場合、当学科の学びで得られた理系の素養が武器になり、文系の最優秀層と互角以上の戦いができます。専門商社の多くは一人当たりの売り上げが1億円超で、総合商社を上回る場合もあり、むしろスマートな就職先と考えられます。

公務員
国土交通省(総合)(学部、院)*、環境省(総合)、総務省(統計専門職)、国税庁(国税調査官)、東京都(院)、静岡県、川崎市(学部、院)*、横浜市*、東京消防庁、東京都特別区(学部、院)*等

毎年コンスタントに公務員志望者は存在しており、順調な合格実績を残しています。特に、東京都特別区の造園職は人気でしたが、近年は、多様な分野への興味が高まっています。

ユニークな就職例
ギークス、電通プロックス、日本航空、日本放送協会、笹川平和財団、明治学院大学職員等

その他、典型的ではありませんが、ゲーム会社のディレクター、広告制作会社のディレクター、パイロット、記者、財団の研究コーディネーター、大学職員などユニークな道を模索する学生もいます。


このように、当学科の就職先の一部を紹介しましたが、ベンチャー企業、ニッチ企業、起業など興味深い就職先は省いています。また、当学科の卒業生は転職によるキャリアアップが巧みという特徴がおり、これらは別の機会に紹介いたします。

詳細な就職先・進路リストは各年度ごとにすべて紹介していますので、下記をごらんください。研究室によっては、就職先を紹介しているところもありますので、興味のある研究室のHPもご覧ください。

2017年卒
2018年卒
2019年卒
2020年卒
2021年卒